とある日
日曜日なので、家でのんびりテレビを見ていると、突然警察がやって来た。『○○智子って知ってるよね?』と聞かれ、それが半月ほど前まで一緒に住んでいたトモコちゃんの本名と分かるまでしばらく時間がかかった。嘘をついても仕方ないので、『はい』と答え、その刑事を部屋にあげて事情聴取に応じることにした。
話を聞くと、どうやらトモコちゃんは援助交際をしていたのが発覚して、現在警察に保護されているらしい。自発的にではなく、家出中に知り合った男(僕ではない!)に強制的にやらさせられていたようだ。もちろんそうして得た金は、その男が全て巻き上げていたらしい。その極悪男と、援助交際の相手になった男(7〜8人もいた!)は既に逮捕されたということだった。時期的に考えて、彼女が2回目にうちに来ていたときには既にその犯人と交流があったみたいだ。あの時彼女が電話したり外出して会っていた男に間違いない。しかもなんと、トモコちゃんがうちに滞在していた間も、僕が仕事で留守にしているときに、その犯人の手引きで客をとっていたらしい。自分の家が、そんな犯罪に利用されたとは気分が悪い。
刑事は、トモコちゃんがうちにいたときの生活ぶりについて詳しく聞いてきた。もちろん体の関係についても聞かれた。正直に『ありました』と答えるしかなかった。何か被害にあったかと聞かれたので、彼女が出て行くときに金を盗まれたことを告げた。逮捕されるのかなと思ったが、僕が取り調べに協力的なのと、彼女と恋愛感情があったので犯罪に当たらないということで、幸運にも無罪放免となった。いちおう、その刑事には『もう家出少女を家に泊めるなんてうらやましい(←本当にこの言葉を使った)ことはするなよ』と、こっぴどく注意された。
思えば、トモコちゃんは元々こんなことをする子ではなかった。最初にうちに来た時点で、無理にでも引き止めておくべきだったかも知れない。刑事さんによると、最近はいわゆる不良タイプではなく、トモコちゃんのような大人しそうなタイプの子が、こういった事件に巻き込まれることが多いそうだ。なんとも、悲しい世の中である。
その数ヵ月後
トモコちゃん事件の関係で、なんと検察から出頭命令が来てしまった。仕方なく会社から有休をもらい、電車で30分のところにある検察庁に行った。初めての経験である。
しばらく待合室で待っていたが、呼び出されて検事室に入った。担当検事は、少々頼りなさそうなおじさんだった。傍らに若い秘書みたいな男がいて、こっちのほうはしっかりしているような印象を受けた。いちおう今回の面談の目的は、トモコちゃんに援助交際を強要した犯人を起訴するための書類を作成するということだったが、僕に関する部分は先日警察に話したことをもとに調書がほとんどできあがっており、それの確認をさせられた。検事はその内容を一文ごとに読んでいき、僕に間違いがあれば指摘するように促した。
正直言って、その調書はかなり勝手に作られていた。警察に話していないはずの、トモコちゃんとの出会いとか、二人の生活の細やかな内容とか、感情のもつれがあって別れたとか、聞いているこっちが赤面してしまうような一大恋愛&ポルノ小説という内容だった。当然、かなりの部分で訂正をお願いすることになった。法律用語では、エッチのことを『肉体関係を持つ』というらしい。なんだか、こっちの言葉の響きのほうがいやらしい。
ようやく調書が完成すると、『裁判の日程が決まったら連絡する』と告げられて、帰された。余りにも犯人の凶悪性が浮き彫りとなった結果、僕のほうはおとがめなし、ということらしい。今後裁判に出廷するようなことや、犯罪人として逮捕される可能性はまずないようだ。少しだけ安心した。